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障害福祉事業M&Aの手続き完全ガイド|指定・人員・加算・利用者説明

2026 8/07
コラム
2026年8月7日
障害福祉事業M&Aの指定・人員・加算・引継ぎ手続きを確認する担当者

最終確認日:2026年8月6日

本記事は、2026年8月6日時点の国の公表資料を基に、障害福祉事業のM&A・事業承継で確認すべき実務を整理した一般的な解説です。指定権者ごとの運用、法人類型、取引手法、契約内容によって必要な対応は変わります。個別案件では、指定権者、所轄庁、弁護士、税理士、社会保険労務士その他の専門家へ確認してください。

障害福祉事業 M&A 手続きは、株式や事業の売買契約だけで完結しません。指定の取扱い、人員配置、加算・減算、利用者との契約、職員の雇用、建物・消防、補助財産、国保連請求、行政への届出を、一つの工程表にまとめる必要があります。手順を誤ると、契約上は譲渡できても、予定日にサービスを提供できない、報酬の算定前提が変わる、職員や利用者への説明が間に合わない、といった問題が生じます。

特に2026年は実務上の確認点が増えています。2026年6月1日以降に新規指定された一部サービスには、令和9年度報酬改定までの臨時・応急的な基本報酬が設けられました。一方、国の2024年6月21日付事務連絡に沿って、事業譲渡や吸収合併等について指定手続の簡略化と報酬上の実績通算が認められた場合は、その応急的な報酬単価の適用対象外とされています。また、共同生活援助では2025年度から地域連携推進会議等が義務化され、2027年4月1日からは共同生活援助が総量規制の対象サービスに加わります。

この記事では、売り手・買い手が最初の検討からクロージング後まで何を、誰と、どの順番で確認するかを具体的に解説します。「指定はそのまま移る」「職員や利用者には成約後に説明すればよい」「入金されている加算だから問題ない」といった思い込みを避け、支援を止めない承継計画を作るための実務ガイドとしてご利用ください。

この記事の要点

  • 障害福祉事業のM&A手続きは、取引契約、指定、雇用、利用契約、請求、物件を並行して設計する。
  • 運営法人が変わる事業譲渡・合併等では、原則として承継法人による新規指定が必要であり、売買契約だけで指定は移らない。
  • 職員等に変更がなく実質的に継続すると指定権者が認める場合、指定申請の簡素化や過去実績の通算が可能になることがあるが、自動適用ではない。
  • 2026年6月1日以降の一部新規指定には応急的な報酬単価がある。取引スキーム別に適用の有無を指定権者と確認する。
  • 事業譲渡で労働契約を移すには、労働者本人の真意に基づく個別承諾が必要である。
  • 利用者への説明は、個人情報の移転と利用契約の承継・再締結を分けて考え、本人の意思決定を支える。
  • 共同生活援助では地域連携推進会議、住居訪問、記録・公表を承継対象の運営実務として点検する。
  • 2027年4月からの共同生活援助の総量規制を見据え、承継予定地の自治体計画と例外運用を早期に確認する。

目次

  1. 障害福祉事業M&Aの手続きが複雑な理由
  2. 株式譲渡・事業譲渡・合併等の違い
  3. 全体ロードマップと担当者
  4. 指定手続きの原則と事前相談
  5. 指定簡素化と報酬実績の通算
  6. 2026年6月の応急的な報酬単価
  7. 法人内決議・契約・登記
  8. 人員基準と職員の承継
  9. 利用者説明・契約・個人情報
  10. 加算・減算・国保連請求
  11. サービス種別ごとの重点確認
  12. 共同生活援助の地域連携推進会議
  13. 物件・消防・補助財産
  14. デューデリジェンス
  15. 最終契約とクロージング条件
  16. 説明計画と情報管理
  17. 承継後100日のPMI
  18. 2027年の共同生活援助の総量規制
  19. 実務チェックリスト
  20. よくある質問
  21. まとめ・相談窓口
  22. 公式資料・参考資料

障害福祉事業 M&A 手続きが複雑な理由

一般企業のM&Aでも、株主、取引先、金融機関、従業員、賃貸人との調整は必要です。障害福祉事業では、それに加えて、障害者総合支援法または児童福祉法に基づく指定、報酬告示、指定基準、自治体条例、利用者の支給決定、国保連請求が関係します。営業権や顧客基盤を引き継ぐだけではなく、行政上認められた提供体制を、利用者の生活を途切れさせずに再構成する取引だと捉える必要があります。

たとえば、共同生活援助の一事業所を事業譲渡する場面を考えます。売り手と買い手が譲渡日と価格に合意しても、買い手名義の指定が譲渡日までに有効にならなければ、その日に指定サービスとして報酬請求できるとは限りません。管理者やサービス管理責任者が残らなければ人員配置の再設計が必要です。建物の賃貸借に譲渡禁止条項があれば賃貸人の承諾が必要で、用途変更や消防設備の適合も確認します。利用者の居住と支援を継続するには、契約主体の変更を本人・家族へ説明し、必要な契約手続きを行わなければなりません。

もう一つの難しさは、同じ「M&A」でも法的な効果が異なることです。株式譲渡では法人格は通常変わらず、法人が締結した雇用契約や利用契約も原則として法人に残ります。しかし、代表者、役員、管理者、サービス管理責任者、協力医療機関等の変更届が必要になることがあります。事業譲渡では、対象の資産・負債・契約を個別に選んで移すため、指定、職員、利用者、賃貸借、リース等の承継を一件ずつ設計します。合併・会社分割では会社法上の包括承継や法定手続があっても、障害福祉の指定は別に確認します。

したがって、障害福祉事業M&Aの手続きは、「M&A担当」「行政手続担当」「現場引継ぎ担当」に分断してはいけません。全体責任者が一つのマスタースケジュールを管理し、重要な前提が変わったときに価格、契約、指定、説明日程へ反映させます。指定予定日が1か月延びれば、売り手の運転資金、職員の入社日、賃料、国保連請求、利用契約開始日も変わるからです。

手続きの中心は「支援の連続性」

売り手にとっては経営者の引退や選択と集中、買い手にとっては事業規模の拡大や地域参入が取引目的になります。しかし、障害福祉サービスの利用者にとって重要なのは、翌日も必要な支援を受けられるか、担当者や住環境がどう変わるか、自分の情報が誰に渡るかです。M&Aの成功を譲渡価格や成約日だけで測ると、この中心目的が抜け落ちます。

実務では、クロージング条件の中に「買い手の新規指定」「必要な職員の承諾」「重要な賃貸借の承継」「利用者への説明」「請求口座・電子証明書等の準備」を組み込みます。さらに、成約後の30日、60日、100日で支援の質、職員定着、請求エラー、苦情、事故、行政への未提出事項を確認する仕組みを作ります。ここまで含めて初めて、障害福祉事業の承継手続きが一巡したと考えられます。

株式譲渡・事業譲渡・合併等の違いを先に決める

手続きの順番を決める前に、どのスキームで承継するかを仮置きします。最終決定は法務・税務・指定協議後でも構いませんが、株式譲渡を想定した資料と事業譲渡を想定した資料では、必要な一覧が大きく異なります。比較の起点は、法人格が残るか、運営法人が変わるか、資産・契約を選別できるか、過去の責任をどこまで承継するかです。

確認項目 株式譲渡 事業譲渡 吸収合併・会社分割等
取引対象 運営法人の株式・持分 選定した事業、資産、負債、契約 再編契約で定める権利義務
運営法人 原則として同一法人が存続 売り手法人から買い手法人へ変更 手法に応じ消滅・存続・承継
障害福祉の指定 法人は同一でも役員等の変更届を確認 原則、新規申請・指定を前提に協議 会社法上の承継とは別に新規指定を確認
職員 使用者法人は原則変わらない 労働契約の承継に個別承諾が必要 合併・分割の法定手続と労働者保護を確認
利用契約 契約主体は原則同一。ただし支配権変更条項や説明を確認 契約上の地位の移転または再契約を個別設計 包括承継の範囲、説明、利用者意思を確認
資産・負債 法人内のものを原則まとめて引き継ぐ 対象を選択可能。承継漏れに注意 再編契約と法令に従い承継
過去リスク 未払債務、返還、税務等を法人ごと承継しやすい 契約で対象を区分できるが、法定責任や実務上の影響は残り得る 手法ごとの承継範囲を精査
向きやすい場面 法人全体を一体で承継したい 特定拠点・特定事業のみ承継したい 複数事業の再編や包括的な統合を行いたい

株式譲渡でも「何もしなくてよい」わけではない

株式譲渡は法人格が変わらないため、事業譲渡より契約承継が少ないことがあります。ただし、株主や代表者の変更で、融資契約の期限の利益、経営者保証、賃貸借・フランチャイズ・システム利用契約のチェンジ・オブ・コントロール条項が発動する場合があります。役員に欠格事由がないか、業務管理体制の届出先や法令遵守責任者が変わるか、WAM NETの公表情報を更新するかも確認します。

また、株式譲渡は過去の請求や労務リスクを法人内に残したまま承継する性質があります。買い手は、国保連から入金済みだから適正と判断せず、算定根拠と記録を抽出確認します。売り手は、懸念事項を隠して価格を守ろうとするより、事前に事実関係と改善状況を整理した方が、表明保証や補償の範囲を限定しやすくなります。

事業譲渡は「移すもの一覧」が取引の設計図になる

事業譲渡では、建物、賃借権、車両、備品、預託金、現預金、売掛金、未収給付費、買掛金、未払費用、借入金、補助金、利用契約、雇用契約、委託契約、保険、電話番号、ドメイン、記録、マニュアルを一覧化します。契約書の別紙に資産一覧だけを付けても、日々の運営に必要なアカウント、鍵、印鑑、帳票、消防点検記録、個別支援計画の原本が漏れれば、承継日から業務が止まります。

移さないものも明記します。たとえば、譲渡日前の国保連債権を売り手に残すのか、返戻・過誤の再請求権限を誰が持つのか、利用者預り金をどう精算するのか、前受金や未消化の利用料を誰が負担するのかを決めます。「事業に関する一切」という表現だけに頼らず、現場の一日を時系列でたどり、必要物を洗い出します。

社会福祉法人・NPO法人・一般社団法人では法人類型を先に確認する

すべての法人で株式会社と同じ株式譲渡ができるわけではありません。社会福祉法人には株式がなく、評議員会・理事会、所轄庁、基本財産、定款、社会福祉法上の手続が関係します。NPO法人や一般社団法人も、社員・理事等の構造、残余財産、定款、認定・指定等を確認します。法人格を変えずに経営体制を交代するのか、合併するのか、事業譲渡するのかで手続が異なるため、名称ではなく実体を確認してください。

障害福祉事業 M&A 手続きの全体ロードマップ

標準期間は案件ごとに異なります。指定権者の締切、審査期間、現地確認、法人内決議、物件承諾、職員・利用者説明があるため、希望日の数か月前に開始しても間に合わないことがあります。以下は順序を考えるためのモデルであり、指定日を保証するものではありません。

段階 主な作業 重要な成果物 主な担当
1.初期整理 目的、対象事業、希望時期、優先条件、法人類型を整理 検討メモ、対象範囲表 経営者、M&A担当
2.基礎調査 財務、指定、人員、加算、物件、契約、事故・指導歴を確認 初期診断表、課題一覧 経営・現場・専門家
3.行政事前相談 匿名または秘密保持前提で、スキームと希望指定日を相談 相談記録、必要書類・締切表 譲受予定法人、行政担当
4.候補探索 匿名概要、秘密保持、候補先評価、トップ面談 ノンネーム、NDA、質問回答 M&A支援者、経営者
5.基本合意 価格の考え方、スキーム、独占交渉、DD、想定日程を合意 基本合意書、DD依頼資料 当事者、法務・財務
6.デューデリジェンス 財務税務、法務、労務、指定・請求、物件、支援運営を調査 DD報告、是正計画、価格調整 各専門家、現場責任者
7.指定申請・契約交渉 申請書、体制届、事業計画、契約条項、承諾条件を並行準備 申請一式、最終契約案 行政担当、弁護士、労務
8.説明・承諾 職員、利用者・家族、賃貸人、金融機関、取引先へ順次対応 説明資料、同意書、再契約書 経営者、管理者、各担当
9.クロージング 前提条件確認、代金決済、株式・資産・書類・鍵等を引渡し 条件確認書、引渡一覧、議事録 当事者、専門家
10.PMI 請求、人員、支援、苦情、行政届、会計、ITを安定化 30・60・100日レビュー 新経営者、管理者、現場

最初に作るべき三つの表

第一は「指定・届出表」です。事業所番号、サービス種別、指定権者、指定日、更新日、定員、主従関係、加算届、変更履歴、行政担当窓口を並べます。第二は「人員表」です。職種、常勤・非常勤、常勤換算、資格・研修、兼務先、雇用主、契約期間、退職予定、承継意向を整理します。第三は「契約・承諾表」です。利用契約、雇用、賃貸借、リース、融資、保証、業務委託、給食、送迎、保険、ITを一覧化し、承継方法と同意期限を設定します。

この三表に、担当者、期限、前提条件、状況、証憑保管場所を加えると、マスタートラッカーになります。M&A支援者だけが管理するのではなく、現場管理者と行政手続担当が週次で更新します。重大な未確定事項には赤、依存関係があるものには黄、完了には緑などの表示を付けると、決済日に何が残っているかを判断しやすくなります。

行政相談は契約交渉と同じくらい早く始める

指定権者により、事前相談の予約方法、申請締切、標準処理期間、必要な現地確認、提出媒体、補正方法が異なります。買い手候補が確定する前でも、匿名化した前提で一般的な運用を確認できる場合があります。少なくとも、基本合意後には、譲渡予定スキーム、対象サービス、職員・場所・設備の変更有無、希望日、簡素化・実績通算の希望を整理して相談します。

相談記録は、日付、担当部署、担当者、質問、回答、留保事項、次回提出物を残します。口頭回答を契約の確定条件として扱わず、必要に応じて書面・メールで認識を確認します。担当者の異動や追加資料の要請があっても経緯を追えるようにするためです。

障害福祉事業 M&A 手続きにおける指定の原則

障害福祉サービス等の指定は、一定の人員・設備・運営基準を満たす事業者に対して、指定権者が行う行政処分です。事業を売買する民間契約と、指定を受ける行政手続は別物です。運営法人が変わる場合、厚生労働省の2024年6月21日付事務連絡は、承継法人の事業所として新規申請・指定が必要であることを原則として示しています。

「以前から同じ場所で同じ職員が支援する」「買い手は同じグループ会社である」「売り手の指定有効期間が残っている」といった事情だけで、買い手が旧指定を利用できるとは限りません。指定日と譲渡日を一致させる必要がある場合は、旧法人の廃止日、新法人の指定日、利用契約開始日、雇用開始日、賃貸借開始日、請求主体の切替を一つの日付表で確認します。

指定権者へ伝える前提情報

  • 売り手・買い手の法人名、法人類型、代表者、役員、主たる事務所
  • 対象事業所の名称、所在地、事業所番号、サービス種別、定員、指定・更新日
  • 株式譲渡、事業譲渡、合併、会社分割等の取引手法と予定日
  • 職員、管理者、サービス管理責任者等の変更有無と承継予定
  • 建物、設備、住居、主たる・従たる事業所の変更有無
  • 利用者、支援内容、営業時間、営業日、送迎、協力医療機関の変更有無
  • 現在算定している基本報酬区分、加算・減算と実績通算の希望
  • 運営指導、監査、改善報告、返還、行政処分の有無と対応状況
  • 希望指定日、申請予定日、利用者・職員への説明予定

買い手の欠格要件、登記事項、定款目的、事業開始届、事業計画、収支予算、勤務形態一覧、資格証、研修修了証、平面図、設備写真、賃貸借契約、消防関係書類なども準備します。2026年4月以降、障害福祉サービス等の指定申請では国の標準様式が法令上の標準となっていますが、提出方法や添付確認には自治体運用があるため、最新の案内を確認します。

指定をクロージングの前提条件にする

最終契約には、買い手が必要な指定を予定日までに取得したこと、重要な加算届・体制届の準備が完了したこと、旧法人の廃止・休止手続が適切に連動することを前提条件として定めます。指定権者は民間契約の当事者ではないため、「必ず指定される」と保証できません。審査の補正、現地確認、建物工事、職員採用が遅れた場合の延期、解除、費用負担を決めておきます。

指定取得前に代金を全額支払い、あとから行政手続を整える設計は危険です。どうしても決済と指定日がずれる場合は、誰がどの期間サービスを提供し、誰が請求し、職員を誰が雇用し、利用者契約を誰が持つのかを、法務・指定・労務の各面から明確にします。名義貸しや実態と異なる請求にならないよう、曖昧な暫定運用を避けます。

指定手続きの簡素化と報酬実績の通算

厚生労働省・こども家庭庁の2024年6月21日付事務連絡は、吸収合併、吸収分割、新設合併、新設分割、事業譲渡等に伴う指定の取扱いを整理しました。運営法人が変わる場合は新規指定が必要という原則を維持しつつ、指定権者が、職員に変更がないなど、前後で事業所が実質的に継続して運営されると認める場合には、指定申請手続の簡素化と、基本報酬・加算・減算に関する過去実績の通算を柔軟に扱う考え方です。

重要なのは、これは「M&Aなら指定が自動承継される」という制度ではないことです。新しい運営法人の欠格要件、役員、管理体制等の審査は必要であり、簡素化される書類や実績通算の範囲は前提事実と指定権者の判断に依存します。契約書に「実績を承継する」と書いても行政上の取扱いは確定しません。

実質的な継続を説明する資料

観点 説明する内容 証憑例
人員 管理者・サービス管理責任者・従業者が前後でどうなるか 新旧人員表、雇用承諾、勤務形態一覧、資格証
場所・設備 所在地、住居、設備、定員に変更があるか 新旧平面図、写真、賃貸借、消防書類
利用者 利用者層、利用継続、支援方針、説明計画 匿名利用者一覧、説明文、契約切替計画
運営 営業日、支援内容、個別支援、記録、委員会をどう継続するか 運営規程対照表、マニュアル、年間計画
報酬 どの基本報酬・加算・減算の実績通算を求めるか 体制届、算定一覧、実績表、根拠記録
法人管理 買い手の法令遵守体制、他事業所の運営状況 登記、役員名簿、業務管理体制、行政履歴

職員の氏名や利用者情報は必要な範囲に絞り、安全な方法で共有します。行政相談用の資料と買い手DD用の資料を混同せず、提出先、目的、法的根拠、保管期限を管理します。変更がある項目は隠さず、なぜ変更が必要か、基準をどう満たすか、支援への影響をどう抑えるかを説明します。

実績通算で確認する代表例

報酬上の実績には、単に前年度の売上を引き継ぐという意味はありません。サービス種別に応じ、平均利用時間、利用定員、平均工賃月額、就労定着実績、人員配置、加算の算定実績、欠席時対応、送迎、重度者支援、福祉専門職員配置等、基本報酬区分や加算・減算の判定に使う実績が関係します。どの期間・どの事業所・どの指標を通算できるかを、根拠資料とともに指定権者へ確認します。

売り手の実績に誤りがあれば、通算できること自体が買い手に有利とは限りません。実績の母集団、計算式、例外、届出日、算定開始月を再計算し、記録と請求データを突合します。加算だけを通算し、関連する減算や改善義務を見落とすことがないよう、新旧の体制届を対照表にします。

2026年6月の障害福祉報酬とM&A手続き

2026年度の臨時応急的な報酬改定では、収支差率が高く事業所数が急増しているとされた四つの類型について、2026年6月1日以降に新規指定を受けた事業所に、一定程度引き下げた応急的な基本報酬が設けられました。対象は、就労継続支援B型、共同生活援助のうち介護サービス包括型・日中サービス支援型、児童発達支援、放課後等デイサービスです。適用期間は令和9年度報酬改定までとされています。

これは「2026年6月以降にM&Aをしたすべての事業所の報酬が下がる」という意味ではありません。株式譲渡では運営法人と指定が同一のままか、事業譲渡等では新規指定に当たるか、国の簡素化通知に基づく取扱いが認められるか、重度障害児者やサービス不足地域等の配慮措置に該当するかを確認します。

事業譲渡・吸収合併等に関する明示的な取扱い

令和8年度障害福祉サービス等報酬改定等Q&A VOL.1の問12は、2024年6月21日付事務連絡に基づき、事業譲渡や吸収合併等について指定手続の簡略化や報酬上の実績通算等を行った場合、応急的な報酬単価の適用対象外であると明示しています。ただし、当事者が簡略化を希望しただけでは足りず、指定権者の審査・確認を経る必要があります。

取引価格の試算では、通常単価で承継できる前提と、応急的単価が適用される前提の両方を作ります。最終契約では、どの前提で価格を決めたか、行政判断が異なった場合の調整方法を明確にします。将来の報酬改定を保証することはできないため、売り手が長期の売上を保証するような表明は避け、確認済みの事実と将来予測を分けます。

対象外となり得る配慮措置を正確に読む

国Q&Aは、重度障害児者への対応、離島・中山間地域、自治体が客観的に必要とした事業所等への配慮を示しています。共同生活援助・就労継続支援B型では、対象となる加算が利用者単位で算定される場合、その利用者のみ応急的単価の対象外となるものと、事業所の体制で算定されるため事業所全体が対象外となるものがあります。単に「重度者を受け入れている」だけで全利用者が通常単価になるとは限りません。

また、2026年6月1日以降の従たる事業所追加、単位追加、定員増、共同生活援助の住居追加等は、新規指定ではないため応急的単価の対象外とされています。一方、就労継続支援A型からB型への変更のように新規指定を要するサービス種別変更は対象となり得ます。共同生活援助のサービス種別変更は届出で足りるため対象外とされた例があります。実際の案件では、名目でなく指定手続の実体を確認します。

2026年報酬確認の要点

  • 対象サービスか。
  • 2026年6月1日以降の「新規指定」に当たるか。
  • 事業譲渡等の簡素化・実績通算の取扱いが認められるか。
  • 重度障害児者、離島・中山間地域、自治体が必要とした事業所等の配慮に該当するか。
  • 利用者単位の適用除外か、事業所全体の適用除外か。
  • 通常単価・応急的単価の双方で事業計画と資金繰りが成立するか。

報酬制度は複雑で、自治体や国保連システム上の処理も関係します。M&Aの価値算定で最も危険なのは、制度の例外を希望的に解釈し、その売上を前提に借入や譲渡価格を決めることです。行政への事前照会と保守的な感応度分析をセットにしてください。

法人内決議・契約・登記の手続き

行政手続と並行して、法人内部の意思決定を進めます。株式会社の重要な事業譲渡、合併、会社分割、株式譲渡承認等では、会社法、定款、株主構成に応じて取締役会や株主総会の決議が必要になります。医療法人、社会福祉法人、NPO法人、一般社団法人等はそれぞれ根拠法と定款が異なるため、議決機関、特別決議の要否、所轄庁の認可・届出、公告、債権者保護、登記の要否を整理します。

決議の内容とM&A契約の内容が一致しているかも確認します。対象事業、対価、譲渡日、相手方、重要な前提条件、代表者への委任範囲が曖昧だと、後から有効性や権限が問題になるおそれがあります。関連当事者取引や利益相反がある場合は、当該役員の参加可否、価格の公正性、議事録の記載を弁護士に確認します。

契約前に確認する会社・法人の基礎資料

  • 履歴事項全部証明書、定款、株主名簿、社員・評議員・理事・監事等の名簿
  • 過去の増資、株式譲渡、持分移動、種類株式、質権、名義株の有無
  • 取締役会・株主総会・理事会・評議員会等の議事録と決裁規程
  • 関連当事者との貸付、借入、賃貸借、業務委託、個人保証
  • 金融機関の融資契約、担保、保証、財務制限条項、期限前弁済条項
  • 業務管理体制、法令遵守責任者、行政への法人単位の届出
  • 補助金、助成金、指定管理、委託事業の交付条件・承継制限

株主名簿と登記の株数が一致しない、古い株券や相続未処理がある、代表者個人名義の不動産を事業所が使用している、といった問題は、中小の障害福祉事業でも珍しくありません。交渉終盤で発覚すると、譲渡日を延期しなければならないため、初期段階で是正方針を決めます。

外部契約の承継可否を一件ずつ確認する

事業譲渡では契約上の地位を個別に移す必要があるものが多く、株式譲渡でも支配権変更の事前承諾条項があることがあります。賃貸借、車両・複合機・介護機器のリース、給食、送迎、廃棄物、警備、通信、請求ソフト、記録システム、給与計算、協力医療機関、嘱託医、損害保険、フランチャイズ等を契約台帳にします。

台帳には、契約相手、期間、自動更新日、解約予告期間、譲渡禁止、承諾要否、保証金、違約金、価格改定、個人情報委託、反社会的勢力条項を記載します。承諾を依頼する時期が早すぎると情報漏えいにつながり、遅すぎると前提条件を満たせません。基本合意後に優先順位を付け、重要契約はクロージング前提条件、代替可能な契約は誓約事項に分ける方法があります。

人員基準と職員承継の手続き

障害福祉事業M&Aで最も早く確認すべき資源は人です。指定基準は職種名と人数だけでなく、常勤性、専従、兼務、常勤換算、利用者数、障害支援区分、サービス提供時間、資格・実務経験・研修要件などと結び付いています。名簿上の人数が足りていても、承継日に退職する職員、長期休業中の職員、別拠点との過剰兼務があれば、基準を満たせないことがあります。

人員デューデリジェンスの基本

項目 確認内容 代表的な資料
雇用関係 雇用主、雇用形態、契約期間、勤務地、職務、更新 雇用契約書、労働条件通知書
勤務実態 出勤日、時間、休憩、残業、夜勤、兼務、欠勤 タイムカード、シフト、賃金台帳
配置基準 常勤換算、専従要件、管理者兼務、利用者数との対応 勤務形態一覧、請求月の勤務表
資格・研修 資格有効性、実務経験、研修修了、更新・経過措置 資格証、実務経験証明、修了証
労務債務 未払残業、有給休暇、社会保険、最低賃金、休職 賃金台帳、就業規則、36協定
定着リスク 退職予定、キーパーソン依存、採用難、派遣・委託依存 面談記録、離職率、求人履歴
労使問題 紛争、ハラスメント、労災、是正勧告、内部通報 通知書、調査記録、改善報告

事業譲渡では労働者本人の個別承諾が必要

事業譲渡は権利義務を個別に移す特定承継です。厚生労働省の事業譲渡等指針は、譲渡会社の労働契約を譲受会社へ承継させるには、承継予定労働者から個別の承諾を得る必要があると示しています。2026年5月25日から適用された改正後指針でも、労働者の真意による承諾と、十分な情報提供・協議が重視されています。

承諾書に署名をもらうことだけが手続ではありません。譲受会社の名称・事業内容、承継日、勤務地、職務、賃金、労働時間、勤続年数、有給休暇、退職金、社会保険、就業規則、試用期間の扱い、承諾しない場合の取扱いを具体的に説明します。説明と意思確認を同じ短い面談で完了させるのではなく、質問期間や相談窓口を設け、圧力を感じさせない運用にします。

「全員承継する予定」という当事者の希望と、各職員の自由な意思は分けて考えます。承諾率をクロージング条件にする場合も、個人を不当に拘束する条項や、退職を申し出た職員への不利益取扱いを避けます。承継を希望しない職員の雇用関係を売り手がどう扱うかは、解雇法理を含む労働法の問題であり、単にM&A対象外とすればよいわけではありません。

株式譲渡でも職員説明は必要

株式譲渡では雇用主法人は通常変わりませんが、経営方針、役員、給与制度、評価、勤務体制が変わる可能性があります。法的に個別の転籍同意が不要な場面でも、突然の発表は離職や支援不安につながります。情報管理とのバランスを取りながら、発表日、説明者、説明内容、個別面談、FAQ、相談窓口を準備します。

承継後に労働条件を不利益に変更する場合は、株式が変わったことだけを理由に一方的に変更できるとは限りません。就業規則、個別同意、労働契約法上の合理性等を確認します。買い手は統一制度を急いで導入せず、まず現行条件を棚卸しし、差異の理由と移行期間を説明します。

サービス管理責任者等のキーパーソンを属人化させない

サービス管理責任者、児童発達支援管理責任者、管理者、請求担当、虐待防止担当、BCP担当など、一人が複数の役割を持つ事業所では、その人の離職が複数の基準・運営に波及します。役割一覧を作り、代替可能者、必要な研修、引継ぎ資料、行政届出を整理します。資格証の写しだけでなく、個別支援会議の進め方、モニタリング期限、家族との連絡、関係機関との暗黙の調整まで引き継ぎます。

買い手が「本部から人を出せる」と説明する場合も、実際の勤務地、勤務時間、兼務状況、資格・実務経験を確認します。2026年の共同生活援助に関する通知は、名義貸しや短期配置の繰返し、必要な勤務時間を確保しない配置等を不適切な例として挙げています。M&Aは人員基準を形式的に整える機会ではなく、実勤務を持続可能にする機会にします。

利用者説明・利用契約・個人情報の手続き

利用者・家族への説明は、成約の広報ではなく、本人が今後のサービス利用を判断するための手続です。説明内容は、運営主体が変わる理由、変更日、支援内容、場所、職員、利用料、苦情窓口、個人情報の取扱い、契約手続、他の選択肢、相談先です。知的障害、発達障害、精神障害、感覚障害等の特性に応じ、やさしい言葉、図、読み上げ、手話、家族・相談支援専門員の同席など合理的な方法を用います。

事業譲渡では契約主体変更への理解と同意を整える

厚生労働省の社会福祉法人向け合併・事業譲渡等マニュアルは、事業譲渡の対象施設の利用者について契約主体が変わるため、利用者や家族等へ丁寧に説明し、理解を得ることを重視しています。民法上、契約上の地位の移転には相手方の承諾が問題となるため、利用契約の条項、法人類型、取引手法を弁護士と確認し、三者間の地位移転合意にするのか、旧契約を終了して新契約を締結するのかを決めます。

「利用者全員の同意が必要」と一括表現するだけでは実務になりません。契約者が本人か法定代理人か、成年後見人等がいるか、家族は連絡先にすぎないか、意思決定支援をどう行うか、同意しない場合にサービスをどうつなぐかを個別に確認します。重要事項説明書、運営規程、利用料、個人情報同意書も新法人の内容に更新します。

個人情報の事業承継と利用契約の同意を混同しない

個人情報保護委員会の通則ガイドラインでは、合併、分社化、事業譲渡等による事業承継に伴う個人データの提供は、一定の要件の下で第三者提供に該当しないと整理されています。事業承継の交渉段階でデューデリジェンスのために相手方へ個人データを提供する場合も、利用目的・取扱方法、漏えい時の措置、不成立時の消去等を契約で義務付ける必要があります。

したがって、「個人情報を渡すには常に本人同意が必要」とも、「事業承継なら何でも同意なく渡せる」とも言えません。個人情報保護法上の提供可否と、利用契約上の地位を移すための承諾は別の論点です。承継後も、承継前の利用目的の範囲内で個人データを利用することが原則です。DDでは氏名を伏せ、利用者IDや集計値を使い、個別記録の閲覧は必要最小限にします。

利用者説明の段階設計

  1. 準備段階:対象者、契約者、意思決定支援者、説明方法、緊急連絡先を確認する。
  2. 初回説明:確定した事実と未確定事項を分け、変更理由と予定を伝える。
  3. 個別確認:本人の不安、支援上の配慮、契約意思、質問を記録する。
  4. 契約手続:重要事項、利用料、苦情窓口、個人情報等を説明し、必要な書面を交わす。
  5. 承継直前:担当者、連絡先、初日の予定、緊急時対応を再確認する。
  6. 承継後:一定期間後に本人の理解・安心・支援状況を再確認する。

説明記録には、説明日、参加者、使用資料、本人の反応、質問、回答、追加対応、意思確認を残します。説明を受けたことの署名と、契約承継への同意は目的が異なるため、書式を分けることも検討します。本人が理解しにくい場合でも、家族だけで進めず、本人にわかる方法を工夫することが大切です。

加算・減算・国保連請求の承継手続き

障害福祉事業の企業価値は、将来の報酬収入に大きく左右されます。しかし、試算表に計上された売上は、請求が通った結果であって、算定要件が永続的に満たされている保証ではありません。加算届、勤務表、資格・研修、個別支援計画、サービス提供記録、会議録、利用実績、送迎記録、請求データを突合し、算定根拠を再現できるかを確認します。

四層で照合する

  1. 制度層:報酬告示、留意事項通知、Q&A、自治体通知で要件を確認する。
  2. 届出層:体制届、加算届、変更届の受理日と算定開始月を確認する。
  3. 運営層:職員配置、研修、会議、個別支援、設備等の実態を確認する。
  4. 請求層:利用実績、サービスコード、加算、返戻・過誤、入金を確認する。

四層が一致していなければ、過去の返還リスクや将来売上の下方修正が必要です。たとえば、体制届は提出済みでも、特定月に必要職員が欠勤し代替配置できていない、個別支援計画の同意が遅れている、会議開催記録がない、といった事実があれば、算定要件への影響を専門家と検討します。

譲渡日前後の請求主体を切り分ける

国保連請求にはサービス提供月と請求月のずれがあります。事業譲渡では、譲渡日前のサービスを旧法人が請求し、返戻・過誤・再請求が譲渡後に発生することがあります。誰が請求データを作成し、電子証明書やIDを利用し、入金口座を管理し、照会に回答し、返還を負担するかを決めます。

旧法人の電子証明書やアカウントを新法人が無断利用する運用は避けます。新法人の事業所番号、請求システム、金融機関口座、代理請求契約等を事前に準備し、初回請求のテスト項目を設定します。利用者負担、食材料費、家賃、光熱水費、預り金についても、締日と精算方法を明確にします。

減算・返還・行政指導を価格に反映する

加算の過大算定だけでなく、人員欠如、サービス提供職員欠如、個別支援計画未作成、情報公表未報告、業務継続計画未策定、虐待防止措置未実施、身体拘束廃止未実施等の減算可能性を確認します。制度改定で減算開始時期や算定方法が変わるため、対象期間ごとのルールを用います。

リスク金額は「対象月の請求額×最大返還率」の単純計算だけでなく、事実認定の範囲、時効、自治体見解、改善済みか、加算に連動する他項目があるかを検討します。確定していない問題は、価格控除、エスクロー、特別補償、表明保証、クロージング前是正などに分けて契約へ反映します。

サービス種別ごとの重点確認

共通手続だけでは障害福祉M&Aのリスクを捉えられません。同じ法人が複数サービスを運営している場合でも、事業所単位で重点項目を変えます。以下は網羅的な基準一覧ではなく、初期調査の優先順位を付けるための整理です。

共同生活援助

介護サービス包括型、日中サービス支援型、外部サービス利用型の区分、住居・ユニット・定員、世話人・生活支援員・夜間支援、サービス管理責任者、バックアップ施設、協力医療機関、家賃・食材料費・光熱水費、利用者預り金、消防・避難、地域連携推進会議を確認します。住居ごとの賃貸借、用途、消防設備、入居者契約が承継日にそろうかが重要です。

日中サービス支援型では重度化・高齢化に対応する常時支援体制や短期入所の併設等も確認します。介護サービス包括型・日中サービス支援型は2026年6月の応急的報酬単価の対象類型であるため、簡素化・実績通算と配慮措置を含めて試算します。

就労継続支援A型・B型

A型では雇用契約、最低賃金、労働時間、生産活動収支、経営改善計画、スコア方式、利用者賃金を確認します。B型では平均工賃月額、基本報酬区分、生産活動収支、工賃規程、施設外就労、目標工賃達成指導員等を確認します。特定取引先への売上依存、経営者個人の営業関係、原価計算、在庫、利用者工賃の原資が承継後も維持できるかを調査します。

B型は2026年6月の応急的報酬単価の対象であり、過去実績通算の可否が価値算定へ直接影響します。平均工賃の計算資料を月別・利用者別に再計算し、事業譲渡で生産活動契約や設備が抜け落ちないかを確認します。

生活介護・自立訓練・就労移行支援

障害支援区分、利用時間、定員、人員配置、送迎、入浴、リハビリ・機能訓練、医療的ケア、食事提供、施設外支援、就労移行実績等をサービス別に確認します。利用者の障害特性に対応する職員技能と設備が、買い手の標準運営へ統合しても維持されるかが重要です。送迎車両、運転者、保険、経路、乗降介助も対象にします。

居宅介護・重度訪問介護・同行援護・行動援護

従業者資格、サービス提供責任者、訪問シフト、移動時間、直行直帰、特定事業所加算、緊急時対応、利用者宅の鍵・連絡情報、記録方法を確認します。買い手が別の勤怠・記録システムへ切り替えると、訪問実績と請求の連携に障害が出やすいため、並行稼働期間を設けます。

児童発達支援・放課後等デイサービス

児童発達支援管理責任者、児童指導員・保育士等の配置、支援プログラムの公表、個別支援計画の五領域との関連、送迎、安全計画、学校・園・家族との連携、定員超過、欠席時対応等を確認します。両サービスは2026年6月の応急的報酬単価の対象であり、重症心身障害児や医療的ケア児等への配慮の適用単位を正確に読みます。

相談支援

相談支援専門員の資格・現任研修、担当件数、モニタリング月、サービス利用支援、地域連携、記録、利益相反を確認します。同一グループ内サービスへの過度な集中がないか、利用者の選択が確保されているかも見ます。担当者変更は利用者との信頼関係に影響するため、同行・引継ぎ期間を設けます。

共同生活援助の地域連携推進会議を承継する

共同生活援助では、地域との連携による透明性・質の確保、利用者の権利擁護等を目的として、地域連携推進会議の設置等が2024年度は努力義務、2025年度以降は義務となりました。厚生労働省の2026年版「共同生活援助における運営や支援に関するガイドライン」は、利用者、利用者家族、地域住民の代表、共同生活援助に知見を有する者、市町村担当者等で構成する会議を、各事業所がおおむね年1回以上開催すると整理しています。

会議開催だけでなく、おおむね年1回以上、構成員が事業所を訪問する機会を設ける必要があります。複数の共同生活住居やサテライト型住居がある場合は、住居ごとにおおむね年1回以上、構成員が見学する機会を設定する考え方です。会議の報告、要望・助言等は記録して5年間保存し、公表します。第三者評価等を代替措置とする場合は、適用要件と公表・保存を確認します。

M&Aで引き継ぐべき地域連携資料

  • 会議の設置要綱、構成員名簿、就任依頼、秘密保持誓約
  • 年間開催計画、招集案内、配付資料、議事録、出席簿
  • 住居別の訪問日、訪問者、確認内容、利用者の了承記録
  • 要望・助言に対する改善計画と実施状況
  • 会議記録の公表場所・公表日、個人情報のマスキング
  • 代替する第三者評価等がある場合の評価機関・結果・公表

資本や運営者が変わっても、地域との関係は契約書だけで移りません。現管理者と新管理者が構成員、市町村、相談支援、医療機関、近隣関係者を訪問し、連絡経路をつなぎます。会議構成員が利用者の個人情報に触れる可能性があるため、秘密保持を確認し、居室見学は利用者の了承を得て行います。

会議を「年1回の形式行事」にしない

M&A直後の会議は、新運営者の理念、変更点、緊急連絡先、苦情窓口、支援改善計画を説明する機会になります。ただし、取引価格や個人の労働条件など秘密情報を開示する場ではありません。利用者の安全、地域との交流、防災、虐待防止、住環境、支援の質など、会議目的に沿う事項を扱います。

DDでは、開催回数だけでなく、構成員の実質、住居訪問の網羅、助言への対応、記録公表を確認します。未実施があれば、指定権者へ相談し、承継前後の是正計画を作ります。過去の不備を新法人に隠して任せるのではなく、売り手が知る経緯と地域の懸念を引き渡します。

物件・消防・補助財産の手続き

障害福祉事業の物件は、単なる賃貸面積ではなく、指定設備の一部です。登記上の用途、建築確認、検査済証、用途変更、自治体条例、消防法、避難経路、スプリンクラー、自動火災報知設備、誘導灯、非常用照明、消火器、バリアフリー、居室面積、訓練・作業室、相談室、静養室等を、サービス種別と現況に照らして確認します。

2026年の共同生活援助に関する国通知は、新規指定審査で、用途変更、改修工事、消防署の指導による設備の設置が完了または完了見込みであるかを確認し、指定予定日までの完了が確認できなければ指定年月日を延長する考え方を示しています。M&Aで実質的な継続を主張する場合でも、無届けの増改築、図面と現況の不一致、消防点検の未実施があれば、審査や承継後運営に影響します。

賃貸物件の確認ポイント

  • 賃借人名義、対象範囲、契約期間、更新、解約予告、賃料、保証金
  • 譲渡・転貸・使用者変更の禁止、賃貸人の承諾方法
  • 障害福祉事業・共同生活援助等としての使用承諾
  • 改修の承諾、原状回復、造作・消防設備の所有と撤去負担
  • 連帯保証人、保証会社、代表者交代時の再審査
  • 隣接住民・管理組合との合意、駐車場、送迎車の利用条件

事業譲渡で賃貸借を新法人に移す場合、賃貸人の承諾や新契約をクロージング条件にします。株式譲渡でも、代表者・株主変更を通知すべき条項や、実質支配者の変更を解除事由とする条項がないか確認します。賃料値上げや保証金追加を求められた場合の価格・費用調整も決めます。

所有物件・代表者個人物件

法人所有物件は登記、抵当権、差押え、境界、固定資産税、修繕履歴、耐震、土壌・浸水等を確認します。株式譲渡なら法人内に残りますが、担保権者の承諾や融資返済条件が変わることがあります。事業譲渡で不動産も移す場合は、売買契約、所有権移転登記、不動産取得税、消費税区分、担保抹消等を検討します。

代表者やその親族が所有し、法人へ貸している物件は特に注意します。M&A後も貸し続けるのか、買い手へ売却するのか、賃料を改定するのか、経営者退任後の修繕・退去をどうするのかを合意します。相場より著しく低い賃料が利益を押し上げている場合、承継後の正常賃料に補正して価値を算定します。

補助金で取得・改修した財産

国・自治体の補助金で取得し、または効用が増加した建物・設備・車両等には、処分制限が残っていることがあります。補助目的に反する使用、譲渡、交換、貸付、担保設定等には、補助金適正化法、交付要綱、財産処分承認基準に基づく事前承認や納付が必要となる場合があります。厚生労働省は財産処分承認基準を公表しており、財産処分が見込まれる場合は事前相談を求めています。

固定資産台帳だけでは補助財産か判別できないことがあります。交付決定通知、実績報告、補助対象経費、取得年月日、処分制限期間、自治体負担分、抵当権を追跡します。事業譲渡契約に「設備一式」と書く前に、譲渡できるか、承認にどれくらいかかるか、納付金を誰が負担するかを確認します。承認前に名義や用途を変えないことが重要です。

障害福祉事業M&Aのデューデリジェンス

デューデリジェンスは、欠点を探して値切るためだけの調査ではありません。指定を維持し、支援を継続し、取引後に予期せぬ返還や離職を防ぐために、事実と改善方法を共同で確認する工程です。売り手は資料を整理し、買い手は質問の目的を説明し、現場負担と個人情報に配慮します。

財務・税務DD

3〜5期の決算、月次試算表、事業所別損益、資金繰り、国保連入金、利用者負担、補助金、固定資産、借入、役員貸借、関連当事者取引、税務申告を確認します。事業所別会計がない場合は、職員人件費、賃料、車両、共通本部費を合理的な基準で配賦し、正常収益を作ります。

一時的な補助金、過年度過誤調整、経営者個人負担、未払残業、修繕先送り、相場外賃料を補正します。利用者数と報酬単価を掛けただけのトップダウン計画ではなく、人員配置と稼働日数からボトムアップで検証します。2026年応急的単価、2027年改定、加算喪失、人件費上昇について感応度を作ります。

法務DD

法人、株式・持分、意思決定、許認可、契約、訴訟・紛争、知的財産、個人情報、反社会的勢力、保険、債務保証を確認します。利用者事故、虐待・身体拘束、苦情、行政通報、労災、交通事故について、発生事実、報告、調査、再発防止、保険対応を追います。件数だけで良否を判断せず、隠蔽がないか、記録が一貫しているかを見ます。

労務DD

就業規則、雇用契約、勤怠、給与、残業、休暇、社会保険、最低賃金、労働保険、36協定、健康診断、ハラスメント、労使紛争を確認します。夜勤・宿直・待機の扱い、休憩の実態、固定残業、事業所間移動、研修時間、直行直帰など、障害福祉現場特有の勤務を抽出します。未払賃金リスクだけでなく、承継後の人員基準を満たすシフトかを評価します。

指定・報酬DD

指定通知、更新、変更届、体制届、運営規程、重要事項説明書、人員・設備基準、情報公表、業務管理体制、運営指導、改善報告、返還、国保連請求を確認します。最低でも複数月を抽出し、利用者一人の個別支援計画から提供記録、勤務実績、請求明細まで縦に追います。加算ごとに届出日、算定開始、要件、証憑、責任者を整理します。

支援・運営DD

個別支援計画、アセスメント、モニタリング、サービス担当者会議、ケース記録、事故・ヒヤリハット、苦情、虐待防止、身体拘束適正化、感染症、BCP、防災、安全計画、研修・訓練、地域連携を確認します。単に書類があるかではなく、利用者ごとの支援に反映され、職員が理解し、期限どおり更新されているかを見ます。

IT・個人情報DD

記録・請求・勤怠・給与・会計・メール・ファイル共有・端末・ネットワークの一覧、契約名義、管理者、二要素認証、バックアップ、退職者アカウント、持出し、漏えい事故を確認します。個人端末や個人クラウドに利用者情報が残っていないか、印刷物・USB・FAXの運用も含めます。承継時にはアクセス権を役割ごとに再発行し、旧経営者の権限を適切な時点で停止します。

DD結果は四つに分類する

分類 意味 対応例
実行前に必ず解消 指定・安全・取引成立に不可欠 人員欠如、物件承諾、重大な届出未了
価格に反映 将来収益や債務に定量影響 加算喪失、修繕、未払賃金、返還見込
契約で配分 発生・金額が未確定 特別補償、エスクロー、表明保証
PMIで改善 直ちに停止させるほどではない運営課題 様式統一、研修改善、権限整理

すべての不備を価格控除にする必要はなく、逆に「成約後に直す」で済ませてはいけない事項もあります。利用者安全、指定基準、重大な請求誤りは優先して是正します。DD報告書には、根拠資料、事実、法的・制度的評価、金額影響、期限、責任者を分けて記載します。

最終契約とクロージング条件

最終契約は、譲渡対象と価格を書くだけの文書ではありません。指定権者という第三者の判断、職員・利用者・賃貸人等の承諾、報酬実績、承継後の返還や苦情を扱う必要があります。M&A支援者のひな型をそのまま使わず、障害福祉の事実に合わせて弁護士が調整します。

主な契約条項

  • 対象:株式、事業、資産、負債、契約、記録、知的財産、預り金の範囲
  • 価格:基準日、現預金・借入、運転資本、未収給付費、価格調整
  • 前提条件:指定、承諾、法人決議、担保解除、重大な悪化がないこと
  • 表明保証:指定、人員、請求、税務、労務、契約、事故、個人情報の事実
  • 誓約:通常運営、重要変更の禁止、申請協力、説明、資料保存
  • 補償:対象、上限、免責、期間、請求手順、特別補償
  • 解除・延期:指定遅延、承諾不足、重大違反が判明した場合
  • 引継ぎ:経営者・管理者の協力期間、報酬、権限、競業・勧誘
  • 秘密保持:利用者・職員情報、発表、取引不成立時の返却・消去

前提条件は「取得済み」「申請済み」を区別する

「必要な許認可手続が完了していること」という抽象表現では、指定申請を提出すればよいのか、指定通知を受ける必要があるのか争いになります。対象サービスごとに、指定通知、体制届受理、事業開始届、消防検査、賃貸人承諾等の具体的書類を列挙します。行政が紙の受理証を出さない場合は、どの証跡で確認するかも決めます。

承継日までに利用者全員の新契約が必要な設計なら、その達成状況と同意しない利用者への対応を定めます。ただし、利用者の選択を取引成立の道具として圧迫しないことが前提です。一定割合を条件にする場合も、本人の権利、代替サービスの調整、個人情報、売り手の廃止時の便宜提供義務を優先します。

表明保証を現場で検証可能な言葉にする

「法令をすべて遵守している」という無限定の表明は、売り手に過大で、買い手にも調査の焦点を与えません。指定取消し・効力停止事由、未開示の返還通知、人員欠如、重大事故、未払賃金、補助財産処分、個人情報漏えい等、案件の重要項目に具体化します。開示資料で例外を明示し、既知事項は価格・特別補償・是正計画で処理します。

クロージング当日の引渡し

代金決済、株式・印鑑・通帳だけでなく、事業継続に必要な引渡しをチェックリスト化します。指定通知原本、契約書、利用者記録、職員記録、請求データ、鍵、車両、カード、端末、アカウント、電子証明書、印章、現金・預り金、マニュアル、緊急連絡網、薬・金銭管理、消防・BCP資料等があります。個人情報を含むため、受領者、時刻、媒体、件数、暗号化、旧データの保管・消去を記録します。

職員・利用者・取引先への説明計画

情報開示が早すぎれば噂や退職を招き、遅すぎれば承諾や準備が間に合いません。誰に、いつ、誰が、何を、どの資料で伝えるかをステークホルダー別に決めます。すべてを一斉発表するのではなく、法的承諾が必要な相手、支援上早期説明が必要な相手、公開後でよい相手を区分します。

相手 主な説明事項 注意点
管理者・キーパーソン スキーム、予定、役割、守秘、引継ぎ 必要最小限の早期共有と退職リスク対応
全職員 雇用主、条件、処遇、組織、相談窓口 確定・未確定を分け、個別質問の場を作る
利用者・家族 支援、契約、費用、担当、個人情報、選択肢 本人中心、障害特性に応じた説明
相談支援・学校・医療 運営変更、連絡先、支援連携、緊急時 必要な同意・守秘の範囲で共有
賃貸人・金融機関 承継方法、支払・保証、代表者、契約継続 事前承諾と取引発表のタイミングを調整
地域連携構成員 新運営者、連絡先、支援継続、地域方針 個人・取引秘密を開示しすぎない

説明用FAQは、待遇、配置、サービス変更、料金、屋号、管理者、契約、個人情報、苦情窓口、緊急時対応など実際の質問を想定します。「何も変わりません」と断言せず、変わらない事項、変える事項、検討中の事項を分けます。発表後に内容が変わった場合は、同じ経路で更新します。

承継後100日のPMI

PMIは企業文化や会計システムの統合だけではありません。障害福祉事業では、利用者支援、人員配置、指定・届出、請求、安全を安定させることが最優先です。承継初日に買い手の様式へ全面変更すると、記録漏れや職員負担が増えます。まず現行運営を理解し、法令上急ぐ変更と、段階的に統合する変更を分けます。

0〜30日:止めない

  • 日々の人員配置、欠勤時の代替、緊急連絡を毎日確認する。
  • 利用者ごとの支援、服薬、食事、送迎、行動上の配慮を引き継ぐ。
  • 初回国保連請求、利用者請求、口座、電子証明書をテストする。
  • 未提出の変更届、体制届、情報公表更新を期限管理する。
  • 職員・利用者の相談窓口を設け、離職・不安・苦情を早期把握する。

31〜60日:見える化する

  • 加算根拠、人員表、個別支援計画期限をダッシュボード化する。
  • 事故・苦情・ヒヤリハット、虐待防止、身体拘束、BCPをレビューする。
  • 事業所別収支、資金繰り、未収、返戻・過誤を月次で確認する。
  • 役割が一人に集中している業務を分担し、手順書を作る。
  • 地域・医療・相談支援との連携面談を完了する。

61〜100日:改善を定着させる

  • DD是正事項を完了・継続・追加対応に分類し、経営会議で承認する。
  • 会計、勤怠、記録、請求システムの統合計画を現場負担とともに決める。
  • 研修、委員会、訓練、地域連携推進会議の年間計画を更新する。
  • 採用・定着、処遇、キャリア、管理者後継を中期計画へ落とす。
  • 売り手の引継ぎ終了条件と、未解決事項の責任者を確認する。

100日で全統合を終える必要はありません。達成すべきなのは、重大リスクが管理され、誰が何をいつまでに行うかが明確な状態です。買い手の成功体験を押し付けず、対象事業所の利用者像、職員の技能、地域関係を理解してから改善します。

2027年4月からの共同生活援助の総量規制

厚生労働省の2026年6月「障害福祉サービス事業者等の指定のガイドライン」は、総量規制の対象サービスを整理し、共同生活援助が2027年4月1日から新たに対象になると明記しています。総量規制とは、一定の区域で供給サービス量が障害福祉計画等のサービス見込量以上である、または指定により計画達成に支障を生じるおそれがある場合に、都道府県等が指定しないことができる制度です。

2026年8月6日時点では、共同生活援助への適用開始は将来の2027年4月1日です。「全国一律で新規指定が禁止される」「既存のグループホームが営業できなくなる」という制度ではありません。対象区域、供給量、見込量、実施・解除、公募、例外は自治体の計画と運用に関係します。既存事業所の定員増を伴う指定等も影響を受け得ます。

事業承継等が例外運用の例として示されている

同ガイドライン概要は、地域で不足する個別ニーズ等への例外的取扱いの例として、強度行動障害、重症心身障害、医療的ケア等を対象とする場合に加え、「事業継承等で実質的に支援体制に変更が無い新規指定の場合」を挙げています。これは、M&Aなら必ず例外になるという保証ではありません。自治体が例外規定をどう定め、個別案件をどう判断するかを確認する必要があります。

2027年4月をまたぐ共同生活援助の事業譲渡では、総量規制の実施予定、対象区域、例外要件、公募、意見申出制度、市町村協議を早期に確認します。実質的継続を示すため、人員、住居、定員、利用者、支援内容、重度者受入れ、地域連携の新旧対照表を作ります。予定日を前倒しするための駆け込みではなく、通常の審査期間を確保してください。

価格・契約への影響

総量規制により新規指定や定員増が不確実なら、将来の増床・住居追加を当然の成長計画として価格へ織り込まないことが重要です。既存定員の継続価値と、将来の追加投資価値を分けます。事業承継例外を前提とする場合は、指定権者の確認を前提条件にし、判断が得られない場合の延期・解除・価格調整を定めます。

障害福祉事業 M&A 手続きチェックリスト

以下は案件開始時に使う全体チェックです。該当しない項目を消すのではなく、「非該当」と判断した理由を残すと、後の担当者が再確認できます。

初期・スキーム

  • 売却・承継の目的、希望時期、必須条件、撤退条件を文書化したか。
  • 対象法人、事業所、サービス、住居、資産、負債、契約を特定したか。
  • 株式譲渡、事業譲渡、合併・会社分割等を比較したか。
  • 法人類型に固有の決議、認可、所轄庁協議を確認したか。
  • 税負担、消費税、不動産、のれん、繰越欠損金等を専門家と確認したか。

指定・行政

  • 全事業所の指定通知、更新日、事業所番号、定員を一覧化したか。
  • 指定権者へ取引手法と希望日を事前相談したか。
  • 新規指定、変更届、廃止・休止、事業開始届の工程を確認したか。
  • 指定簡素化と報酬実績通算の適用可否・必要資料を確認したか。
  • 2026年6月の応急的単価の影響を試算したか。
  • 自治体の総量規制、意見申出、公募、地域ニーズを確認したか。

人員・労務

  • 雇用主、職種、資格、研修、常勤換算、兼務を実勤務で確認したか。
  • 管理者・サービス管理責任者等の承継意思と代替案があるか。
  • 事業譲渡の労働契約承継について個別説明・承諾を設計したか。
  • 未払残業、有給、社会保険、労災、紛争、休職を確認したか。
  • 承継後の就業条件、給与日、勤続、退職金、相談窓口を準備したか。

利用者・支援

  • 契約者、法定代理人、意思決定支援者、相談支援を確認したか。
  • 利用契約を地位移転・再契約のどちらで扱うか法務確認したか。
  • 本人にわかる説明資料と個別説明日程を準備したか。
  • 個別支援計画、モニタリング、緊急情報、服薬等を安全に引き継ぐか。
  • 同意しない利用者への選択肢と連絡調整を準備したか。

報酬・請求

  • 体制届と実際の人員・運営・請求を突合したか。
  • 基本報酬区分、全加算・減算、算定開始月を再計算したか。
  • 返戻、過誤、返還、運営指導、改善報告を確認したか。
  • 譲渡日前後のサービス、請求、入金、再請求の担当を決めたか。
  • 新法人の事業所番号、電子証明書、請求システム、口座を準備したか。

物件・資産・IT

  • 賃貸人承諾、用途、図面、消防、設備、修繕を確認したか。
  • 補助財産の交付決定、処分制限、事前承認・納付可能性を確認したか。
  • 車両、リース、保険、備品、鍵、預り金の移転方法を決めたか。
  • 記録・請求・勤怠等のアカウント、バックアップ、権限移行を設計したか。
  • DD不成立時と承継後の個人データの保管・返却・消去を定めたか。

契約・クロージング・PMI

  • 指定・重要承諾を具体的な前提条件にしたか。
  • 既知リスクを価格、特別補償、是正計画に反映したか。
  • クロージング当日の引渡一覧と受領者を決めたか。
  • 職員・利用者・地域・取引先への発表順序を決めたか。
  • 30・60・100日のPMI責任者と指標を決めたか。

障害福祉事業 M&A 手続きのよくある質問

Q1.事業譲渡契約を結べば、障害福祉サービスの指定も買い手へ移りますか。

原則として、民間の事業譲渡契約だけで指定は移りません。運営法人が変わる場合は、買い手法人による新規申請・指定を前提に指定権者へ相談します。職員等が変わらず実質的に継続すると認められる場合は、申請簡素化や実績通算の柔軟な取扱いがあり得ますが、自動ではありません。

Q2.株式譲渡なら指定権者への連絡は不要ですか。

法人格が同じでも、代表者・役員・管理者・サービス管理責任者、定款、連絡先、業務管理体制等の変更届が必要になることがあります。役員の欠格要件や他事業所運営状況が確認されることもあるため、取引前に指定権者へ必要手続を確認してください。

Q3.指定手続きの簡素化を受ければ、新規指定は不要ですか。

いいえ。国の2024年6月21日付事務連絡は、承継法人の新規指定を原則とした上で、実質的継続が認められる場合に申請書類等を簡素化する考え方です。「指定の承継」と「新規指定手続の簡素化」を区別してください。

Q4.2026年6月以降の事業譲渡では必ず基本報酬が下がりますか。

必ずではありません。対象サービスの新規指定に応急的単価が設けられていますが、事業譲渡等で国通知に基づく指定簡略化・実績通算を行った場合は対象外とされています。重度障害児者、離島・中山間地域、自治体が必要とする事業所等の配慮もあります。案件ごとに指定権者へ確認し、複数前提で収支を試算します。

Q5.事業譲渡で職員を一括して転籍させられますか。

労働契約の承継には、職員本人の真意に基づく個別承諾が必要です。譲受会社、労働条件、承継日、承諾しない場合の扱い等を十分に説明し、質問・検討の機会を設けます。合併や会社分割では異なる法定手続があるため、スキームごとに確認してください。

Q6.利用者の個人データを買い手へ見せるには全員の同意が必要ですか。

個人情報保護法上、事業承継に伴う提供や、一定の安全管理契約を伴う交渉段階のDD提供は、第三者提供に当たらない場合があります。ただし、必要最小限、目的限定、安全管理、不成立時の返却・消去が必要です。利用契約の地位移転に必要な承諾とは別論点なので、両方を個別に確認します。

Q7.利用者・家族への説明はいつ行うべきですか。

守秘義務、取引の確度、本人の検討時間、再契約や相談支援調整に必要な期間を踏まえて計画します。成約後に初めて知らせると準備が間に合わないことがあります。一方、未確定の早期公表も混乱を招きます。最終契約前後の条件成就を見ながら、説明内容と日程を段階化します。

Q8.過去に入金された加算なら、買い手はそのまま算定できますか。

入金と要件充足は同義ではありません。体制届、算定開始月、人員、資格、研修、個別支援計画、会議・記録、利用実績を確認します。事業譲渡等では実績通算の対象・期間を指定権者へ確認し、新法人の体制届と算定開始時期を整理します。

Q9.共同生活援助の地域連携推進会議は買い手が新しく作り直しますか。

法人や事業所の承継形態に応じて、設置主体、構成員依頼、記録、公表を見直します。重要なのは、会議をおおむね年1回以上開催し、住居ごとの訪問機会、記録の5年保存・公表等を切れ目なく行うことです。既存構成員との関係は、新旧管理者が丁寧に引き継ぎます。

Q10.補助金で整備した建物も自由に譲渡できますか。

自由に譲渡できるとは限りません。処分制限期間中の補助財産は、譲渡、貸付、用途変更、担保設定等に事前承認や納付が必要な場合があります。交付決定通知・実績報告・財産台帳を確認し、交付元と指定権者へ早期相談してください。

Q11.2027年から共同生活援助の新規指定はできなくなりますか。

一律禁止ではありません。2027年4月から共同生活援助が総量規制の対象に加わり、自治体が供給量と計画見込量等を踏まえて指定しないことができる制度です。自治体の実施状況、区域、例外、公募を確認します。国ガイドラインは、実質的に支援体制が変わらない事業承継等を例外例として挙げていますが、個別判断です。

Q12.M&Aの相談は指定権者と仲介会社のどちらを先にすべきですか。

両方を並行して進めます。候補探索や条件整理はM&A支援者が担えますが、指定日、必要書類、簡素化、実績通算の確定は指定権者の領域です。基本合意前でも一般的な運用を確認し、候補確定後は具体的前提で再相談します。

Q13.売却価格は何で決まりますか。

正常収益、純有利子負債、運転資本、資産、地域性、利用状況、人員安定、加算継続、指定・請求リスク、物件、将来投資等を総合します。指定や利用者そのものに価格を付けるのではなく、適法・安定的に支援を継続できる事業基盤と将来キャッシュフローを評価します。

Q14.どの専門家へ依頼すればよいですか。

M&A全体を調整するFA・仲介、契約と法務を担う弁護士、財務税務を担う公認会計士・税理士、労務を担う社会保険労務士、指定手続を支える行政書士等が候補です。重要なのは肩書だけでなく、障害福祉の指定・報酬・現場を理解し、役割と利益相反、手数料、秘密保持を説明できることです。

まとめ:手続きを一つの承継計画にする

障害福祉事業M&Aの手続きでは、価格や契約より先に指定、人員、利用者、報酬、物件の現状を把握し、指定権者と早期に工程を確認します。運営法人が変わる取引は新規指定を原則とし、実質的継続がある場合の簡素化・実績通算を丁寧に説明します。2026年6月の応急的報酬単価、2025年度から義務化された共同生活援助の地域連携推進会議、2027年4月からの共同生活援助の総量規制も、取引日程と価値算定へ反映します。

そして、手続きの中心に置くべきなのは、利用者が必要な支援を続けられることです。職員への十分な説明、本人中心の利用者説明、安全な個人情報移転、請求と支援記録の連続性を、クロージング条件とPMIへ組み込みます。早い段階で課題を開示・整理すれば、是正、価格調整、契約での分担という選択肢が増えます。

障害福祉M&Aセンターでは、対象事業とご希望を伺い、指定・人員・報酬・契約を含む承継工程の整理をお手伝いします。支援内容はサービス案内、対応エリアは対応地域、制度・実務の関連記事はコラム、公開情報を基にした事例解説は事例紹介をご覧ください。

障害福祉事業の承継手続きを、秘密厳守で整理しませんか

まだ売却を決めていない段階でも、指定日程、職員体制、利用者説明、報酬リスクを整理することで選択肢が見えます。法人名を伏せた初期相談も可能です。

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公式資料・参考資料

制度は改定されます。以下は本記事を2026年8月6日時点で確認する際に参照した主な一次資料です。実際の申請では、対象自治体の最新案内・条例・様式も併せて確認してください。

  • 厚生労働省「障害福祉サービス事業所等の指定について」
  • 厚生労働省・こども家庭庁「障害福祉サービス事業者等の指定のガイドライン」(令和8年6月)
  • 厚生労働省・こども家庭庁「障害福祉サービス事業者等の吸収合併等に伴う事務の簡素化について」(令和6年6月21日)
  • 厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.1」
  • 厚生労働省「障害福祉分野における生産性向上・手続負担軽減」
  • 厚生労働省「共同生活援助」関連資料
  • 厚生労働省「共同生活援助における運営や支援に関するガイドライン(第1版)」
  • 厚生労働省「共同生活援助における運営や支援に関するガイドラインの作成並びに新規指定・運営状況把握等の留意事項」
  • 厚生労働省「企業組織の再編に伴う労使関係について」
  • 厚生労働省「事業譲渡又は合併を行うに当たって会社等が留意すべき事項に関する指針」(2026年改正後全文)
  • 厚生労働省「社会福祉法人の合併・事業譲渡」
  • 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」
  • 厚生労働省「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律第22条に基づく財産処分の承認基準」
  • 中小企業庁「中小M&Aガイドライン」
コラム
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