職員説明は発表会の日を決めるだけでは足りません。雇用主、担当業務、給与、勤務場所、支援方針のどこが変わるかを確認し、本人が質問できる時間を確保します。障害福祉では、管理者・サビ管・児発管の継続と日々の支援体制を同じ計画で考える必要があります。
最初に雇用主と譲渡方式を確かめる
株式譲渡では株主が変わっても通常は雇用主である法人が続きます。一方、事業譲渡は労働契約が当然にすべて移る手続きではありません。厚生労働省の事業譲渡等指針は、承継予定の労働者から個別の承諾を得ること、譲受側の概要や労働条件を十分説明し協議することを示しています。会社分割・合併は別の取扱いなので、契約形式を混同しないでください。
2026年の改正を含む現行指針を参照し、案件に合う手続きを労務の専門家に確認します。職員への説明時期に全国一律の「成約の何日前」という正解を置かず、法的手続きと配置確保、協議の時間から逆算します。
口頭の約束を雇用条件比較表にする
代表者は「雇用を守る」という希望を、買い手の具体的な条件に置き換えます。変更なしと回答する場合も、確認した資料と決定者を残します。職員ごとに異なる条件は一斉説明用の資料へ載せず、本人との面談で扱います。
表は横にスクロールできます。キーボードでは表に移動して左右キーで確認できます。
| 項目 | 比較する資料 | 説明を確定する人 |
|---|---|---|
| 雇用主・契約期間 | 現契約と承継後の契約案、更新条件 | 売り手・買い手の人事責任者 |
| 給与・処遇改善・賞与 | 賃金規程、支給履歴、承継後の配分案 | 人事・経理担当 |
| 勤務場所・シフト | 実際の勤務表、送迎・夜間業務、兼務先 | 現場管理者と買い手運営責任者 |
| 職務・資格者配置 | 役割一覧、資格・研修、退職予定 | 管理者・サビ管等と指定担当 |
| 退職金・福利厚生 | 制度規程、加入・精算・継続条件 | 人事責任者・必要に応じ専門家 |
一覧の「未確定」は空欄にせず、誰が何日までに回答するかを書きます。事業譲渡で労働条件を変えて承継する場合の同意も、一般的な承継の承諾と区別して確認します。
管理者の事前確認から個別協議へ進める
買い手候補の探索中は、情報を扱う担当者と目的を限定します。管理者への相談が必要なときは、伝える範囲と秘密保持を決め、決まっていない買い手名や価格を現場全体へ流さないようにします。ただし秘密保持を理由に、必要な労働者の協議・手続きを省略できるという意味ではありません。
条件が具体化したら、代表者と買い手の説明責任者を決め、①現状と検討理由、②決定した条件、③まだ決まっていない点、④支援現場への影響、⑤個別質問の窓口を同じ資料に載せます。その後、個別面談・必要な承諾等を行い、変更が生じた場合は説明資料の版を更新します。
離職の希望と人員基準を別々に確認する
全職員が継続するという前提で勤務表を作らず、本人の意向と承継後の勤務条件を確認します。サビ管・児発管、管理者、夜間担当、請求担当など役割ごとに、退職・休職・兼務変更がある場合の代替案を用意します。資格証だけで配置可否を判断せず、勤務実態、研修履歴、担当サービスと所管の要件を指定権者に照会してください。
利用者・家族への説明では、職員の私的事情を開示する必要はありません。支援担当、緊急連絡先、送迎、相談受付などの利用上の変更を説明し、職員説明と日付や内容が食い違わないようにします。
説明を延期する理由を明確にする検討例
架空の例として、事業譲渡を検討する事業所で、買い手が「基本給は維持する」と回答した一方、処遇改善手当と勤務先が未定とします。この状態で「待遇はすべて変わらない」と発表すると誤解を招きます。比較表に未確定事項と回答期限を記し、職員へ説明・協議できる条件がそろうかを先に確認します。
主要な資格者から継続への懸念が出た場合は、説得の結果を想定して先へ進めず、支援体制を再確認します。決定済みの変更、本人の希望、契約条件、指定上の確認を分けた議事録にすると、条件交渉と現場調整を追いやすくなります。この例は特定企業の取引や当センターの支援実績ではありません。
よくある質問
Q. 買い手が決まるまで職員には何も伝えない方がよいですか。
A. 一律には決められません。秘密保持の範囲と、現場体制の確認・必要な労働者との協議を両立させます。個別承諾等に十分な時間を確保できる計画を作ってください。
Q. 株式譲渡なら説明は不要ですか。
A. 雇用主が続く場合でも、経営方針や担当者の変更に不安が出ることがあります。確定した変更と維持する条件、質問窓口を説明し、労働条件の変更があれば別途必要な確認をします。
公式資料・確認先
- 厚生労働省:企業組織再編と労働契約の承継:再編方式ごとの手続きと2026年改正資料
- 厚生労働省:事業譲渡等指針(現行):個別承諾、条件説明、協議時間の確保
- 厚生労働省:障害福祉サービス事業者等の指定に関するガイドライン:指定・運営体制の行政確認
制度資料の確認日:2026年10月5日。ここに挙げる制度の一般的な説明だけで、個別案件の承継可否や届出の要否は確定しません。事業所を所管する指定権者等に確認してください。
編集責任:株式会社M&A Do/障害福祉M&A総合センター編集部。個別の法務・労務・会計・指定の判断は、事実関係と契約に応じて専門家・所管機関へ確認してください。
