関東の障害福祉事業で、職員から処遇について質問が出ている状況を考える架空の検討ケースです。処遇改善、賃金改善、職員説明を扱います。実在企業の成約経過や当センターの支援実績、賃上げの達成結果を示すものではありません。
制度の年度とサービス提供月を区別する
最初に、現在の加算区分、対象サービス、計画の年度、承継を予定する月を記録します。2026年度は期中の報酬改定があるため、前年の様式や加算率をそのまま使う前提を置きません。障害福祉の加算と介護保険の処遇改善加算も別制度として確認します。
国の改定資料と、事業所を所管する自治体の最新通知・様式を確認します。法人変更や加算区分・賃金規程等の変更について、どの資料を誰が提出するかを照会してください。M&Aを理由に必ず同じ加算が続く、または必ず算定できなくなると一律に説明しないことが大切です。
計画・入金・給与・報告を四つの記録でつなぐ
表は横にスクロールできます。キーボードでは表に移動して左右キーで確認できます。
| 記録 | 見る内容 | 確認担当 |
|---|---|---|
| 計画・届出 | 年度、対象事業所、加算区分、配分方針、変更履歴 | 申請担当・代表者 |
| 加算の請求・入金 | 提供月、請求額、支払額、返戻・過誤による調整 | 請求担当と経理 |
| 賃金改善の実施 | 給与・手当・賞与の支給記録、規程、対象職員 | 給与担当・人事 |
| 実績報告・職員周知 | 報告の元帳、提出控え、説明資料、質問回答 | 報告担当・管理者 |
計画書に記した額と実際の加算額や賃金改善額を照合し、差がある場合は集計期間、支給時期、調整内容を確認します。集計表だけで済ませず、給与台帳や入金明細へたどれる索引を残します。対象者名や給与は必要な担当者だけに共有します。
承継前後の担当と資料を分けても年度の追跡を切らない
株式譲渡で法人が続く場合でも、現担当者が退職すると年度の集計根拠が失われることがあります。事業譲渡等で法人が変わる場合は、指定・加算の手続きと、旧法人側の実績報告・賃金支払いの担当をそれぞれ確認します。取引契約で費用分担を決めることと、行政への届出・報告義務を確認することは別の作業です。
引継ぎ表に、旧期間の入力担当、承継月の照合担当、年度末の報告担当、給与データの保存先を書きます。旧側の業務を買い手が代行する場合も、必要な権限と提供範囲を整理し、個人のIDやパスワードを無計画に共有しません。
職員の質問には総額と個人条件を分けて答える
架空の例として、職員が「買い手が変われば手当はなくなるのか」と質問したとします。担当者は、現在の賃金規程、支給実績、承継後の案を比較し、確定した条件と未確定の項目を分けて回答します。加算の受給総額を示すだけでは、一人ひとりの給与や配分方法は説明できません。
回答できない事項には回答期限と責任者を付けます。基本給の維持と処遇改善手当の配分、賞与時の支給、退職する職員の扱いなどを混ぜずに確認してください。給与条件の変更を説明資料だけで済ませず、必要な労務手続きも確認します。
初回給与と月次請求を確認してから設定を変える
承継後は、給与の支給漏れや二重計上がないか、加算区分が届出と合うか、旧月の返戻・調整を誰が処理するかを確認します。会計上の利益が多く見える場合も、未支給・未集計の賃金改善額等が残っていないかを調べます。
疑義が出たときは、後から帳尻を合わせるのではなく、根拠資料と対象期間を特定し所管へ相談します。新しい配分案を作る前に、これまでの計画と実施結果を説明できることが、このケースでの引継ぎ判断の出発点です。
よくある質問
Q. 加算分は買い手が自由に配分できますか。
A. 当該年度の要件、計画、賃金規程、労働条件を確認する必要があります。取引契約だけで行政上・労務上の条件が変わるとは判断しません。
Q. 売り手の担当者が退職しても給与集計表だけで引き継げますか。
A. 集計の根拠を再現できる必要があります。計画・入金・給与・報告の控えと、未処理事項、問い合わせ担当を一緒に残します。
公式資料・確認先
- 厚生労働省:2026年度障害福祉サービス等報酬改定:当該年度の改定資料・通知・Q&A
- 仙台市掲載:2026年度処遇改善加算の国通知等:現行国通知と様式の確認例。市の提出期限は全国一律ではない
- 厚生労働省:企業組織再編と労働契約:給与等の労働条件と承継の協議
制度資料の確認日:2026年10月5日。ここに挙げる制度の一般的な説明だけで、個別案件の承継可否や届出の要否は確定しません。事業所を所管する指定権者等に確認してください。
編集責任:株式会社M&A Do/障害福祉M&A総合センター編集部。個別の法務・労務・会計・指定の判断は、事実関係と契約に応じて専門家・所管機関へ確認してください。
